情熱は生命なき木石で劇を作り上げる。
モダン建築の巨匠、ル・コルビュジエは、自身の著書において、こんな一文を記している。人間の表現活動とは、すべからくそういうものなんじゃないかと思う。絵画であれ、音楽であれ、あるいは建築であれ。つまるところ、すぐれたアートか否かを隔てる境界線は、創作へ向かう欲求の濃度によって引かれる。そんな、シンプルなルールに集約されるのかもしれない。
音楽は彼の一部ではあるが、すべてではない。写真、映像など、あらゆるフィールドにおいて才気を迸らせているがゆえに「マルチクリエイター」なる冠が付されることも多いが、どうにもおさまりが悪い気がする。カール・ハイド。ダンス・ミュージックの先導者「アンダーワールド」のメンバーとして世界中を踊らせ、クリエイティブ・チーム「tomato」ではユニークな試みを次々と繰り出し、多大な影響をおよぼしてきた男。その表現欲求の「頂点」をいつか見る機会が訪れるとすれば、それは、一枚の紙の上で実現するに違いない。
躍動する色彩と曲線。そして、どこかオリエンタルなムードを漂わせるペインティング作品には、並々ならぬ情熱と創造の軌跡が生々しく刻印され、鑑賞する者をカールの内なる宇宙へといざなう。そう、まさしく彼のアートは、画材に意思を与え、みずからの生命を移し替える行為そのものといっていい。きっと足を運んだ方も多いと思うが、8月25日から9月15日にかけて、ラフォーレミュージアム原宿において、カールは自身初の個展を開催した。初日には、貴重なソロ・ペインティング・エキシビションを敢行。人々は、世にまたひとつすばらしいアート=劇の幕があがる瞬間を、目と記憶に焼き付けた。
ここに掲載するテキストは、個展の直前にカールが語ったものである。少年のような輝きを目に宿し、真摯に答えてくれたインタビューの最後は、こんな質問で締めくくってみた。若きクリエイターたちに向けて、あなたならどんな言葉をおくる?「旅を始めて、ずっと続けてほしい。そして、自分の声を探してほしい」。その意味のとらえ方はさまざまだろうけれど、ひとつ、こういう解釈はいかがだろうか。「素直であれ」。